はらぺこ本の虫

読んだ本をゆるーくご紹介。ジューシーな文章が大好物です。

なつのひかり

江國香織

「なつのひかり」


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これは江國流のファンタジーなのだろうな。

不思議の国のアリスのように、変わった人(たまにヤドカリ)と出会い、次から次へと異なる空間へ場面が展開する。

いまいちつかみどころのない小説だと思ったが、もしかすると、これは実験的小説なのかもしれない。


文中に何度も出てくるフレーズ「◯◯の話をしよう。」も、場面転換する方法としては新鮮。しかも今作のような細切れの話には、この手法がマッチしているようにも思う。


また、ほぼ意味のない物語をこの世へ投入することで、

"小説というのは必ず意味を持たなればならないのか?"

という問いを投げかけているようにも思う。「読んで勇気が出た」「気に入ったから他の作品も読んでみたい」などという、読者の優等生的発言をこの作品は全く求めていない気がする。ある意味孤高で、易々と媚びない。そして圧倒的な独創性。

私の考えすぎだろうか。


ここまで書いて、巻末の解説を読んでみた。

担当した作家さんも解説を書くのに苦戦しているようだったが、私の感想よりずっと大人な対応だった。うまくまとめている。

江國さん、意味のない物語って言ってごめんなさい。今回は少ないけど、たまに現れるこころ躍るような表現は好きです。

例えば、麦茶を「澄んだ枯れ葉色のつめたいお茶」と表現するところとか。

モンテロッソのピンクの壁

江國香織=作、荒井良二=絵

モンテロッソのピンクの壁」


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江國さんの絵本。

「何かを手にいれるためには何かをあきらめなきゃいけないってことくらい、私はよく知っている」

まさにそれ、ここ数日私が考えてたこと。

ハスカップという名の猫は「うしろもふりかえらず、軽やかに」目的地モンテロッソへ旅立った。潔い。私は何をうじうじと悩んでいるのか。

早く会社を辞めて、旅に出たらよろし。


ということで、また行きたい町が一つ増えた。

イタリアのモンテロッソ・アル・マーレ。海沿いのリゾート地らしい。江國さんも行ったのかな。少し調べたところだと、少し色褪せたカラフルさがキッチュでなんともかわいい町。

村上龍料理小説集

村上龍

村上龍料理小説集」


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男の世界は金と女と酒でできてるのか、と思った。

高級料理を何事もないことのように盛り込んであるあたりに村上龍の教養が現れていて、かろうじて品が保たれている気がする。これがなかったらただのおっさんの女遊びの話じゃないか。カンブリア宮殿のイメージどこ行った。


帯には「誰もが息を呑むような、恍惚と快楽のオシャレな小説集」とある。果たしてそうだったのか。この本を読んだ男の人の意見を聞いてみたい。

結局のところ、女にはわからない世界なのかもしれないな。

真昼なのに昏い部屋

江國香織

「真昼なのに昏い部屋」


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キュンキュンしました。

ジョーンズさんと出会ったことで"外の世界にでてしまった"美弥子さん。

妻という名、主婦という殻からの解放。いいことなのか、悪いことなのか。

不倫の話なのに、ですます調で書かれているからか、絵本のように柔らかで何か美しいものを見るような印象を受ける。

装丁は名久井直子さん。おどろおどろしさと美しさの狭間みたいな表紙。さすが。

きまぐれ博物誌

星新一

「きまぐれ博物誌」


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今から約50年前の昭和43年から45年にかけて書かれたエッセイ。ショートショートは読んだことあったけど、エッセイは初めて。


まず冒頭の一文がいい。

「ことしもまたごいっしょに九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。これは地球が太陽のまわりを一周する距離です。速度は秒速二十九・七キロメートル。マッハ九十三。安全です。他の乗客たちがごたごたをおこさないよう祈りましょう。」

この"ごたごたをおこさないよう"という所が、現代でいうと北朝鮮とアメリカのピリピリした敵対ムードにぴったりの表現だと思った。

ぜひとも来年の年賀状に使いたい。


星新一の小説の書き方は、話を"思いつく"のではなく、社会や現象を"分析する"という創作方法なのではないだろうかと思った。世界を分析した結果、あの風刺が効いた言葉やショートショートが生まれるのだ。

そして、現代(当時からすれば50年後の未来)を的確に予測する、想像力の豊かさというか、観察眼の鋭さに感心しっぱなしだった。

世界のおやつ旅

多田千香子

世界のおやつ旅


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ただのエッセイ・レシピ本と侮るなかれ。

この本は古本屋で冒頭の1段落を立ち読みして即買いを決めた一冊。

歯切れのいい文章が続く。

筆者のチカコさんはサバサバ、パキッとした性格なのかな、と思う。


生まれたての我が子の体重2990グラムを「バーゲン価格みたい」と言う例えも秀逸。

牛のタルタルを食べた時も、4分の1ずつとは言わずに「90度ずつ」と表現していて、言葉の選び方にグッときた。


"ご縁が2つ重なったらゴー"

"「そのうち」とか「徐々に」とか、うだうだしているヒマはない。しっかり1秒ずつ好きな道を歩こう。"

旅好きにとってはすごく心に響くフレーズも。さすが旅人。


日本は広い。でも世界はもっと広い。

「仕事嫌だな、辞めようかな、どうしようかな」なんてうだうだしているヒマはない。

私の旅歴も今年でちょうど10年だし、いっちょ、なんかやったろうかな、と思う。

案外どこででも生きていけるんだよ、って誰かが言ってたし。

すいかの匂い

江國香織

「すいかの匂い」


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短編集。どれも子どもの頃の話だったり、主人公が小学生だったりする。

江國さんは子ども目線で書いても安っぽくならないところが好き。ませた子どもという意味じゃなくて(たまにそういう子もいるけど)、子どもを一個人としてちゃんと扱っている感じがいい。

でも、「ビー玉よりおはじきの方が好き」だとか、「つつじが咲いていれば蜜をすう」という子どもらしさを忘れてないところも好き。


あと、川上弘美さんの解説がすばらしい。小説を読むことによって、江國さんのひみつを打ち明けられているような気分になるというのに納得。