坂口恭平
「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」
びっくりするほど面白い本だった。
都市でゼロ円で生活するノウハウが実体験とインタビューをもとに書かれている。
去年くらいだっただろうか、"ミニマリスト"が流行ったと思う。少ない持ち物でやりくりしながらスマートに生活する人たちのこと。
実はホームレス生活は究極のミニマリストなのでは?と思った。
見習うべきところがたくさんある。
どれだけの電気量でパソコンが使えるのか?1日に使う水はどれくらいなのか?ガスは1か月でどれほど必要なのか?
電気や水道などのインフラが整った家に安穏と暮らしている私は何も知らない。請求された分だけ素直にお金を支払っている。
そのまま、知らないままでいいのだろうか。
ただ、ピースボートで地球一周をしながら船の中で過ごした3か月半の生活はホームレスの生活にちょっとだけ近かったのかもしれない。
部屋にはコンセントやシャワー、ベッドなどはあったけど、冷蔵庫なし、キッチンなし、電子レンジなし、カセットコンロもダメ、売店は高いしすぐ閉まる、携帯も使えない(海上なので電波がない)、洗濯は洗面所で洗ってベッドのカーテンレールに干す、といった状態で、それでもなんとかやりくりしていた。
不便はあったけど、悪い生活ではなかったな、と今になっては思う。
今までは大阪の民族学博物館や愛知のリトルワールドなんかで、東南アジアの家の実物大の展示を見て「こんな狭い空間に家族6人か…」などと思っていた。
でもそれは、自分のものさしでしかものを見れていないってことだった。恥ずかしい。人はダンボール2個分の空間でも生きていけるのに、狭いって何だ。ものを持つこと、広い場所に住むことが裕福なのか。
忘れていた。私は日本一周した時に軽自動車で寝泊まりしていたのだ。大人4人しか乗れないあの空間でぐっすり寝ていたのだ。
人はどこででも生活できる。
また、本書でも紹介されているが、鴨長明の「方丈記」には、家を捨てて山に小屋を建てて過ごした時のことが書かれている。その小屋が簡単に組み立てられる移動式ハウスだったそうで、「動かすことのできない家に住むことは、合理的な態度ではない」と書かれているらしい。
やはり、ミニマムで動きやすいということは利点なのだ。
快適な車中泊生活再開への憧れが募ってきた。そして野草を見分けられるようになって、生活全体がアウトドアみたいな生き方をしたい。