はらぺこ本の虫

読んだ本をゆるーくご紹介。ジューシーな文章が大好物です。

ホテルカクタス

江國香織「ホテルカクタス」大人のための童話なのかも、という印象。というのも、登場人物が、帽子、きゅうり、数字の2、という人間ではない人たちだから。彼らの名前はあだ名ではなくて、きゅうりはシャワーを浴びれば身体の緑が冴えるし、数字の2がのびの…

蒼い時

山口百恵 「蒼い時」 もうすでに完結しているコンテンツだから安心して接することができる、というのもあるのだと思う。 数年前から私は山口百恵のファンなのだ。 私のカラオケの十八番は「プレイバック Part2」。歌いながら泣いちゃうのは「秋桜」と「さよ…

二十億光年の孤独

谷川俊太郎「二十億光年の孤独」詩や短歌は小説よりも書いてある文字は少ないけれど、その少ない言葉で作者は何を言おうとしているのかを汲みとりながら読むので時間がかかる。それに、自分の内面が冷静でなければ集中できないから、心がうきうきしている時…

ふりむく

絵=松尾たいこ文=江國香織「ふりむく」パリっとメリハリのある絵に江國さんのコロコロした楽しそうな文章が踊る。そんな本でした。気に入ったフレーズをひとつ。「ね、この海の水、その壜の白ワインに似ていない? (中略) 広大な白ワインが月あかりの下で揺…

現実入門

穂村弘「現実入門」穂村さんのことが好きだ。本当に好き。生活力のない感じとか、妄想にふけるところとか。でも、そんなへなちょこな自分を観察してエッセイにしちゃってるのが、またいい。もっと読みたい、もっと知りたい、もっと近づきたい。そして、あな…

犬とハモニカ

江國香織「犬とハモニカ」短編集。一番のお気に入りはゲイカップルがポルトガルで休暇を過ごす「アレンテージョ」。以前読んだアンソロジー「チーズと塩と豆と」に載っていたので、読むのは2度目だった。ごはんを食べる時の描写がとても愛おしい。"僕は思う…

ロック母

角田光代「ロック母」1992~2006年までの短編小説。若い頃の作品は言葉の荒さや題材の刺々しさが目立っていたけれど、年を重ねるごとに深みのある物語が書けるようになってきたのだと、この一冊で成長を感じた。特に笑ったのがタイトルにもなってる「ロック…

深夜特急1

沢木耕太郎「深夜特急1 香港・マカオ」香港旅のために読み始めた本。本屋に置いてある有名どころのガイドブックや女子向けの旅行本を読むだけじゃわからないディープさを求めて読んでいたが、なかなか怪しげな雰囲気のある香港を知れて良かった。後で調べた…

ゼロから始める都市型狩猟採集生活

坂口恭平「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」びっくりするほど面白い本だった。都市でゼロ円で生活するノウハウが実体験とインタビューをもとに書かれている。去年くらいだっただろうか、"ミニマリスト"が流行ったと思う。少ない持ち物でやりくりしながら…

本当の自分に出会う旅

鎌田實「本当の自分に出会う旅」ただの旅行記ではない。年をとっていても、足腰が悪くても、障害があっても、ガンを患っていても、旅をしていいんだと勇気づけてくれるエッセイ。医師の鎌田實だから書けた、柔らかくてしっかりとした文章がいい。病気と闘う…

わたしがいなかった街で

柴崎友香「わたしがいなかった街で」友達がやってた演劇の中で使われていた本。勧められたわけじゃないけど、ちょっと興味があって読んでみた。著者はよくものを考える人なのかな、という印象。考えすぎて哲学的になって自分でも混乱しちゃうみたいな。そん…

ガイドブックにぜったい載らない海外パック旅行の選び方・歩き方

佐藤治彦「ガイドブックにぜったい載らない海外パック旅行の選び方・歩き方」先日読んだ「ひとりっぷ」とは逆に、こちらはパックツアーで海外旅行する人向け。でもやっぱり、こちらの本にも現地の自由行動はバスがいいと書いてある。私、バス苦手なんだよな…

今日も世界のどこかでひとりっぷ

ひとりっP(福井由美子)「今日も世界のどこかでひとりっぷ」旅好き女子必見の1冊。著者はわりとリッチな旅(1泊1万円のホテルとか)が多いけど、荷物やごはんに関しては私みたいな貧乏旅をする人にも参考になる。荷物減らすために私も旅先で下着洗おう!ってな…

がらくた

江國香織「がらくた」江國さんの本を読んでいると、たまに「付き合ってる人がいてても結婚してても、好きな人ができればセックスしていい」っていう感覚になる時がある。この本もそう。私は誰のものでもない、という精神的・肉体的に自立した姿でもあり、性…

お父さん大好き

山崎ナオコーラ「お父さん大好き」短編集。私の父も含め、おじさんはおもしろいし、かわいいと思う。だから、「ハッピーおじさんコレクション」という、おじさんをフィーチャーしたサイトを運営する主人公の気持ちがわからなくもない。私も電車でおじさん観…

ペルセポリス

マルジャン・サトラピ(園田恵子訳)「ペルセポリス I イランの少女マルジ」「ペルセポリス Ⅱ マルジ、故郷に帰る」戦争って経験しないと他人事なんだな、と今の平和な日本にいて思う。いくら戦争に関する本を読んでも、原爆ドームを見ても、その時はぐっと悲…

とるにたらないものもの

江國香織「とるにたらないものもの」子どもの姿をした江國さんが、こっそりと宝箱を開けて見せてくれるようなエッセイ。日常のなんでもないことをよく観察・分析しているな、といつも思う。本人はそんな自覚はないのかもしれないけれど。私も幼い頃に何を考…

旅のうねうね

グレゴリ青山「旅のうねうね」旅マンガエッセイって面白い。私がもう少し画力をつけたら旅マンガエッセイをかけるかもしれない。なんだか俄然やる気が出てきた。そして、作者のようにちょっと中国語ができれば、旅はもっと楽しくなるのかなぁと思った。私の…

給食のおばさん、ブータンへ行く!

平澤さえ子「給食のおばさん、ブータンへ行く!」1年くらい前、JICA関西食堂で食べた月替わりランチがブータン料理だった。予想外の辛さにびっくりしたのを覚えている。そのあたりからブータンに少しずつ興味を持っていた。この本は60歳を前にして、ブータン…

旅をする木

星野道夫「旅をする木」この本を読むタイミングは、本当に"今"だったんだと思う。都会に疲れて、ストレスでおなかが痛くて、尊敬できる人も近くにいなくて。毎日ただただ目の前にある仕事をこなし、ぬるま湯に浸かってるだけのようなふやけた生活をして、"生…

男友だちを作ろう

山崎ナオコーラ「男友だちを作ろう」作者には勝手に親近感を覚えている。はっきりした理由はよくわからないけど、言ってることにしっくりくるからかもしれない。そして、文章から想像する彼女の雰囲気が私の友達に似ているとも思っている。私も男の子と友達…

夕闇の川のざくろ

江國香織「夕闇の川のざくろ」不思議な小説(というか、絵本?)。挿絵が独特で、なぜだか女の子の絵を直視できない。心の奥を見透かされそうな怖さ・凄みがあるからだろうか。気に入ったフレーズ「しおんはとても孤独です。冬の空とおなじくらい、もしくはプ…

エヌ氏の遊園地

星新一「エヌ氏の遊園地」あとがきを読んで驚愕した。昭和41年(1966年)に出版された本らしい。星新一の本だからそんなに新しくはないと思ってたけど、半世紀以上も前に世に出た本だとは思っていなかった。本当に今読んでも面白い。それってすごいことだ。あ…

金米糖の降るところ

江國香織「金米糖の降るところ」人は自由でいい、いや、女は自由でいい、自由でいることは何も悪いことではない、と励まされているような気分になる。本書に登場するのは、江國さんらしい、のびのびとした女性たち。現在勤めている会社に社内恋愛をしている…

短歌という爆弾

穂村弘「短歌という爆弾」正直なところ、とりあえず穂村さんだから買った、というのが本書の購入の理由。短歌はどちらかというと好きだが歌人になりたいと思うほどではない。なので、読んでいくと教科書なんじゃないかと思うくらい眠気を誘ってくる。わから…

なつのひかり

江國香織「なつのひかり」これは江國流のファンタジーなのだろうな。不思議の国のアリスのように、変わった人(たまにヤドカリ)と出会い、次から次へと異なる空間へ場面が展開する。いまいちつかみどころのない小説だと思ったが、もしかすると、これは実験的…

モンテロッソのピンクの壁

江國香織=作、荒井良二=絵「モンテロッソのピンクの壁」江國さんの絵本。「何かを手にいれるためには何かをあきらめなきゃいけないってことくらい、私はよく知っている」まさにそれ、ここ数日私が考えてたこと。ハスカップという名の猫は「うしろもふりか…

村上龍料理小説集

村上龍「村上龍料理小説集」男の世界は金と女と酒でできてるのか、と思った。高級料理を何事もないことのように盛り込んであるあたりに村上龍の教養が現れていて、かろうじて品が保たれている気がする。これがなかったらただのおっさんの女遊びの話じゃない…

真昼なのに昏い部屋

江國香織「真昼なのに昏い部屋」キュンキュンしました。ジョーンズさんと出会ったことで"外の世界にでてしまった"美弥子さん。妻という名、主婦という殻からの解放。いいことなのか、悪いことなのか。不倫の話なのに、ですます調で書かれているからか、絵本…

きまぐれ博物誌

星新一「きまぐれ博物誌」今から約50年前の昭和43年から45年にかけて書かれたエッセイ。ショートショートは読んだことあったけど、エッセイは初めて。まず冒頭の一文がいい。「ことしもまたごいっしょに九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。…