「きまぐれ博物誌」
今から約50年前の昭和43年から45年にかけて書かれたエッセイ。ショートショートは読んだことあったけど、エッセイは初めて。
まず冒頭の一文がいい。
「ことしもまたごいっしょに九億四千万キロメートルの宇宙旅行をいたしましょう。これは地球が太陽のまわりを一周する距離です。速度は秒速二十九・七キロメートル。マッハ九十三。安全です。他の乗客たちがごたごたをおこさないよう祈りましょう。」
この"ごたごたをおこさないよう"という所が、現代でいうと北朝鮮とアメリカのピリピリした敵対ムードにぴったりの表現だと思った。
ぜひとも来年の年賀状に使いたい。
星新一の小説の書き方は、話を"思いつく"のではなく、社会や現象を"分析する"という創作方法なのではないだろうかと思った。世界を分析した結果、あの風刺が効いた言葉やショートショートが生まれるのだ。
そして、現代(当時からすれば50年後の未来)を的確に予測する、想像力の豊かさというか、観察眼の鋭さに感心しっぱなしだった。