はらぺこ本の虫

読んだ本をゆるーくご紹介。ジューシーな文章が大好物です。

ホテルカクタス

江國香織

「ホテルカクタス」


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大人のための童話なのかも、という印象。

というのも、登場人物が、帽子、きゅうり、数字の2、という人間ではない人たちだから。彼らの名前はあだ名ではなくて、きゅうりはシャワーを浴びれば身体の緑が冴えるし、数字の2がのびのびと寝る時は数字の1のような格好になる。そんな描写に思わず、ふふ、と笑ってしまった。しかも、帽子は帽子らしく、きゅうりはきゅうりらしく、そして22らしく、それぞれがそれぞれらしい性格をしているのもおもしろい。

この物語は心がきゅっと締め付けられるような恋愛話もなく、細かな心理描写が散りばめられてることもなく、穏やかに流れていく日々のようで、やさしい物語だった。


物語後半で帽子が言った「世の中に、不変なるものはないんだ」という言葉。

童話のようだと思って読んでいたはずが、急に現実に引き戻されたような気がした。実際、私が旅をしている中でも、このおじいさんには次来た時はもう会えないんだろうな、この古い建物の町並みはそのうち壊されて新しい建物になるんだろうな、などと考えることが度々あった。そう、帽子の言う通り、世の中はどんどんと移り変わっていくのが常なのだ。


だから、仕方ない気もするけれど、約1年ぶりに日本に帰ってきたので、自分の日本語の表現力が乏しくなっていて、感想が貧相になってるのが悲しい。リハビリが必要だなぁと感じた。