はらぺこ本の虫

読んだ本をゆるーくご紹介。ジューシーな文章が大好物です。

青春を山に賭けて

植村直己

「青春を山に賭けて」


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大学では第二外国語として、ドイツ語をとっていた。ドイツ語自体はもうほとんど覚えてないけれど、四角い顔のヒョロッとしたおじちゃん先生のことはよく覚えている。本や詩が好きな人だった。

そんな先生がおすすめしていたのがこの本。それ以来、約10年ほどずっと読みたいと思いながら読めていなかったのだった。先生、ついに読みましたよ。


私も冒険をするタイプなので、植村さんの行動力には憧れと尊敬の念を抱いた。

資金集めをするために、英語も十分にできないのにアメリカに渡り農場で働いたこと。フランスのスキー場でも、スキー初心者だった上にフランス語もままならない状態なのに、臆することなく働き、ジャガイモを食べながら貧乏生活をしたこと。アマゾンを60日もかけてイカダで川下りをしたこと。もちろん世界の山々にひとりで登ったことも。

すべて彼の人柄の良さや周りの人たちのサポートがあったからできたこともあるし、辛かったことも星の数ほどあるだろうけど、私も彼のように地球の上をウロウロしながら、いつまでも人生を楽しんでいたい。


しかし、私の山に関する知識は、NHKの「グレートトラバース」で得たものだけ。登山経験もほとんどない。地元の小さな山と、ロープウェイで駒ヶ岳に登った程度。なので、植村さんの持つ"世界で初めて五大陸最高峰に登頂"という登山の経歴は、ただただすごいことなんだろうな、という漠然とした感想を持っただけだった。

登山をもっと知ればすごさをより感じられるはず。このままではもったいない。

読んでいてそう感じた。


新型コロナウイルスの影響で今年はもう海外へ旅に行けないかもしれない。だったら、国内で人混みを避ける遊びをすればいい。山登りなら、大自然の中で気持ちのいい空気を吸ったり、体を鍛えたりできる。山の植物や鳥にも詳しくなれるかもしれない。

よし、次の目標は登山にしよう。

私は登山靴の相場を調べるためにネットの画面を開いた。

グアテマラの弟

片桐はいり

グアテマラの弟」


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キノコのような髪型でカクカクっとした輪郭に大きな目が特徴的な俳優さん、というイメージの片桐はいり。こんなに楽しい文章が書けるんだ、という発見とともに、読んでいて何度も笑わせてもらった。個性的な役を演じていることが多いけれど、本人も役柄に負けないほど楽しい人なんだろうな。


グアテマラにいる弟を中心とした、旅と家族と思い出の話。

私も世界一周の時に立ち寄ったグアテマラをとても気に入ったので、弟さんの気持ちが分かる気がする。なんだか、居心地がいいのだ。みんな優しく陽気で、せかせかした日本とは違い、グアテマラには穏やかに暮らせそうな雰囲気がある。


グアテマラの人たちは麦茶のようなコーヒーに砂糖を何杯も入れるらしい。弟の奥さんのペトラさんは「人生はあまりにも苦いから、せめてコーヒーだけは甘くするのよ」と言っていた。

ペトラさん語録は他にもある。

グアテマラ料理を習った時には「美味しいごはんさえ作れれば、人生たいていの問題は解決できる」と母から料理の手ほどきを受けたのだと教えてくれた。素敵だ。


物価が安い所に住む人は貧しいのか?

急激な経済成長を遂げた国は、本当に豊かになったのか?

しあわせって何なのか?

自分の居場所はここなのか?


YESNO2択なんかでは答えられない私の中の永遠の問いに、また新たな気づきを与えてくれるような一冊だった。

あとがきを弟さんが書いているのも、また良い。


蚊がいる

穂村弘

「蚊がいる」


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ずっと結婚できなかったのは知っていたが、結婚してからは奥さんネタのエッセイが増えている。しかしこの穂村さんが見初めただけあって、なかなか奥さんもおもしろい。


「東大でいちばん馬鹿な人になら勝てると思う?」や「滝川クリステルとなら顔を取り替えてもいいな」という返事に困るびっくり発言から、穂村さんが今日の出来事を尋ねた時に答えた「お昼に行った喫茶店でマスターとお客さんがオセロやってた。黒がレの字になってたよ」という報告。穂村さんのファンとしては、奥さんもなかなか世間とズレていて好感が持てる。天然なんだろうな。いいな。


解説で陣崎草子さんが穂村さんを表現していたこの言葉もなかなか良かった。

"(穂村さんは)自分の「できなさ」を道具として世界を解析しつづけることで、「神が創りたもうたこの世界」のほころびを、舌を巻く細やかさで指摘し、摂理のおかしさを暴こうとしている。"

穂村さんはベッドで菓子パンを食べてたり、なかなかお店のトイレに行けなかったり、世間一般的に見れば情けない感じの大人かもしれないけれど、自分でそのダメさをちゃんと認識して言葉や短歌に落とし込むのが本当にうまいと思う。こういう人もいますよ、あなただけではないですよ、大丈夫ですよ、っていつも勇気づけられている。

ホテルカクタス

江國香織

「ホテルカクタス」


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大人のための童話なのかも、という印象。

というのも、登場人物が、帽子、きゅうり、数字の2、という人間ではない人たちだから。彼らの名前はあだ名ではなくて、きゅうりはシャワーを浴びれば身体の緑が冴えるし、数字の2がのびのびと寝る時は数字の1のような格好になる。そんな描写に思わず、ふふ、と笑ってしまった。しかも、帽子は帽子らしく、きゅうりはきゅうりらしく、そして22らしく、それぞれがそれぞれらしい性格をしているのもおもしろい。

この物語は心がきゅっと締め付けられるような恋愛話もなく、細かな心理描写が散りばめられてることもなく、穏やかに流れていく日々のようで、やさしい物語だった。


物語後半で帽子が言った「世の中に、不変なるものはないんだ」という言葉。

童話のようだと思って読んでいたはずが、急に現実に引き戻されたような気がした。実際、私が旅をしている中でも、このおじいさんには次来た時はもう会えないんだろうな、この古い建物の町並みはそのうち壊されて新しい建物になるんだろうな、などと考えることが度々あった。そう、帽子の言う通り、世の中はどんどんと移り変わっていくのが常なのだ。


だから、仕方ない気もするけれど、約1年ぶりに日本に帰ってきたので、自分の日本語の表現力が乏しくなっていて、感想が貧相になってるのが悲しい。リハビリが必要だなぁと感じた。

蒼い時

山口百恵

「蒼い時」

 

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もうすでに完結しているコンテンツだから安心して接することができる、というのもあるのだと思う。

数年前から私は山口百恵のファンなのだ。

 

私のカラオケの十八番は「プレイバック Part2」。歌いながら泣いちゃうのは「秋桜」と「さよならの向う側」。最高にかっこいいと思う曲は「ロックンロール・ウィドウ」。

母の影響もあってか、有名な百恵ちゃんの歌はほとんど歌える。

それほど好きなのだ。

 

百恵ちゃんは私が生まれる何年も前に引退している。

誰かが言っていたけれど、昔のアイドルを今追っかけるのは考古学者に似ている。私たちは古い雑誌の記事や動画を"発掘"して喜ぶのだ。

Twitter上で、百恵ちゃんの「プレイバック Part2」と沢田研二の「勝手にしやがれ」をテレビ番組でコラボしていたことを知った時には鼻血が出そうなくらいテンションが上がった。この組み合わせ、最高じゃないですか。若い人にはわかりませんか。いや、若くなくてもわかりませんか。すみません。

 

今回の本は、古本屋でたまたま"発掘"した百恵ちゃんのエッセイ集。

今まで華やかな百恵ちゃんしか追いかけていなかったので、裕福ではなかった過去や父親との関係、裁判の事件などを初めて知った。

21歳で芸能界を引退した百恵ちゃん。そんな若い子がこんな苦労をしながらも、凛としたイメージを壊さないように、自分で考え、行動していたのだと思うと心がぎゅっとなる。

自分が21歳の頃は何をしていただろうか。

 

引退のさよならコンサートではファンから「百恵ちゃん辞めないでー!」と言われていて、それに対して同じ気持ちでいた私だったけれど、この本を読んでからは少し考えが変わった。百恵ちゃんには芸能界から離れて、平和で穏やに暮らしてほしい。幸せになってほしい。そう思うようになった。

引退してから38年が経ちますが、今、幸せですか?百恵ちゃんが幸せなら私も嬉しいです。

 

ちょっとしんみりしてしまったので、最後に本書で私が気に入ったフレーズを。

「髪型を変えるということは、女にとって勇気のいることではあるが、新しい自分を発見するキッカケになるし、たったそれだけのことで、本当に生まれ変われたような気持ちにもなる。

髪型を度々変える人は、移り気だという。たしかにそうかもしれない。しかし、移り気は冒険心の第一関門である。画一化された日常生活の中で、ささやかな冒険心を満たすには、髪型を変えることぐらいしかないような気もする。」

私も髪型を変えてみようと思っている。東南アジア系のような、一目見た感じでは日本人に見えない髪型。

 

旅人っぽさをもっと前面に押し出したい。

二十億光年の孤独

谷川俊太郎

「二十億光年の孤独」


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詩や短歌は小説よりも書いてある文字は少ないけれど、その少ない言葉で作者は何を言おうとしているのかを汲みとりながら読むので時間がかかる。それに、自分の内面が冷静でなければ集中できないから、心がうきうきしている時には読めない。

そんな変な性格に付き合わされて、この本は5年近く本棚に眠っていた。

正確に言えば、はじめの数ページを読んでは本棚にしまい、また気が向いて少し読んではしまいを何度も何度も繰り返していた。そして、やっと、今、最初から最後まで読み終えたのだった。


私たち姉妹は谷川さんの翻訳した絵本を読んで育った。

スイミー、ペツェッティーノ、アレクサンダとぜんまいねずみ、シオドアとものいうきのこ、とっときのとっかえっこ、など(よく考えたらほとんどレオレオニだ)。そして、大人になってからはフレデリック、さかなはさかな、コーネリアスを読んだ(こちらもすべてレオレオニ)。

案外ずっとお世話になっていたのに、詩集を読んだのは今回が初めてだった。


タイトルにもある「二十億光年の孤独」や、亡くなった犬を思って書かれた「ネロ」という詩も当然良いのだけれど、一番気に入ったのは「初夏」だった。その中に少年というカテゴリがあって、


"永遠とは魂にとってなんという倦怠だろう

そして又何という恐怖であろう

ある遊星の一時期とその小さな幸福

ひとつの脳とその美しい恣意の形

そして

ひとつの心とそのいじらしい大きさ

それらの豊かさに僕には答がない"


と書かれていた。

これを読んだ時、体がぞわ~っとなるような、地上から3mmほど浮いてるような不思議な感覚に陥った。

詩は深い。

ふりむく

=松尾たいこ

=江國香織

「ふりむく」


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パリっとメリハリのある絵に江國さんのコロコロした楽しそうな文章が踊る。そんな本でした。


気に入ったフレーズをひとつ。


「ね、この海の水、その壜の白ワインに似ていない? (中略) 広大な白ワインが月あかりの下で揺れているし、つめたい夜の海が、わたしたちの体のなかに収まっているもの。」


海の水を白ワインみたいだと表現するその感性と、漢字ではなくひらがなにする言葉の使い方にいつもながらほほー、となる。

現実入門

穂村弘

「現実入門」


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穂村さんのことが好きだ。

本当に好き。

生活力のない感じとか、妄想にふけるところとか。でも、そんなへなちょこな自分を観察してエッセイにしちゃってるのが、またいい。

もっと読みたい、もっと知りたい、もっと近づきたい。そして、あなたを守りたい。私の欲望が高まるのがわかる。

私はダメ男に弱いのだろうな。


穂村さんに比べて、私は人生の経験値は高い方だと自分で思っている。まだ結婚や出産はしたことはないけれど、バンジージャンプをしたり昆虫を食べたりしたことはある。

しかし、42歳になっても合コンや海外旅行をしたことのない穂村さんを見る(読んで感じる)と、なんてピュアなんだ、と思う。ピュアすぎてまぶしい。触れない。近づけない。

彼は私がとうに失ってしまったものを持っている。


穂村さんは"世界"を怖がっているからこそ、そんなピュアさを保てているのだろうな。

うーん、好きだ。

ずっとその感性を失わずに歳を重ねてほしい。

犬とハモニカ

江國香織

「犬とハモニカ

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短編集。一番のお気に入りはゲイカップルがポルトガルで休暇を過ごす「アレンテージョ」。以前読んだアンソロジー「チーズと塩と豆と」に載っていたので、読むのは2度目だった。

ごはんを食べる時の描写がとても愛おしい。

"僕は思うのだけれど、おなじものをたべるというのは意味のあることだ。どんなに身体を重ねても別の人格であることは変えられない二人の人間が、日々、それでもおなじものを身体に収めるということは。"


坂本真綾の「パプリカ」という曲にも似たような歌詞があったのを思い出した(作詞はやっぱり岩里祐穂)。私はきっと、恋人同士でごはんを食べる、ということをとても重要視してるのかもしれない。


それにしても、江國さんの作品はどういうわけか鎮静剤のような効果があると思う。荒れていた心を鎮めてくれる。知性のかけらが見え隠れするからか、ミステリアスな大人の雰囲気に酔えるからか。

今回もなぜだか救われた気がした。

ロック母

角田光代

「ロック母」


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19922006年までの短編小説。

若い頃の作品は言葉の荒さや題材の刺々しさが目立っていたけれど、年を重ねるごとに深みのある物語が書けるようになってきたのだと、この一冊で成長を感じた。


特に笑ったのがタイトルにもなってる「ロック母」。実家のある島に帰ってきた身重の娘は、母が爆音でニルヴァーナを聴いていることに唖然とする話。

小さく閉鎖的なコミュニティである島に住むということ、一切の家事を放棄した母親、出産シーン。苦い日常とそれに絡む意外性のある出来事とが混ざり合って面白い味が出ている作品だった。


「緑の鼠の糞」というタイを旅する若者の話は、特に食事シーンがよかった。

外気の暑さと料理の辛さに頭と体がマヒして"次第に周囲の物音が消えて"いき、"熱気につつまれた皮膚という壁が極限まで薄くなり、自分の体がこの暑さと同じくどこまでも広がっていくように感じられる"という、恍惚というかハイになる瞬間の表現がすごく上手だと感じた。わくわくした。

本当にタイでプリッキーヌを食べるとこんな感じになるのだろうか。試してみたい。

深夜特急1

沢木耕太郎

深夜特急香港・マカオ


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香港旅のために読み始めた本。

本屋に置いてある有名どころのガイドブックや女子向けの旅行本を読むだけじゃわからないディープさを求めて読んでいたが、なかなか怪しげな雰囲気のある香港を知れて良かった。


後で調べたら、私が現地通貨を両替しに行ったマンション(ビル?)の上が、彼の泊まった宿のようだった。確かに1階に踏み入れた時点でディープな雰囲気があった。

本には書かれてなかったが、なぜかインド系のおじさんがたくさんいた。現在はインド系のコミュニティができているマンションになっているのだろうか。謎は深まる。


彼はあとがきの対談でこう話していた。

「二十五、六ぐらいで行ったらいいなと思うのは、いろいろな人に会ったり、トラブルに見舞われたりするたびに、自分の背丈がわかるからなんですよね」

26歳で初めて海外へ旅に出たそうだ。

でも確かに、若すぎても経験不足から危ないことに巻き込まれる可能性も高くなるだろうし、知識やトラブル対応力も未熟だろう。それに比べて、ある程度の判断力や処世術が身についた頃に旅に出たほうが、自分の安心と安全が確保できて、周りを見て楽しめる余裕が生まれると私も思う。

私も初めての海外は19歳で、何が何かわからぬままベトナムへ。10日間の滞在で初日は泣きそうになった。腹も壊した。ベトナムのことをほとんど知らなくて楽しみきれなかった。

しかし、今なら(だいぶ旅慣れたところもあるが)19の頃よりも知識も度胸も増えて、旅を楽しめるようになったと思っている。


それでもまだ、日本にいると気づきにくい"身の丈"やらを旅をして思い知ることも多い。特に言語。旅に出るたびにやっぱり英語と中国語がいるなぁと反省する。とりあえずで乗り越えては来ているのだけれど、まだまだなのだ。

ゼロから始める都市型狩猟採集生活

坂口恭平

「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」


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びっくりするほど面白い本だった。

都市でゼロ円で生活するノウハウが実体験とインタビューをもとに書かれている。


去年くらいだっただろうか、"ミニマリスト"が流行ったと思う。少ない持ち物でやりくりしながらスマートに生活する人たちのこと。

実はホームレス生活は究極のミニマリストなのでは?と思った。


見習うべきところがたくさんある。

どれだけの電気量でパソコンが使えるのか?1日に使う水はどれくらいなのか?ガスは1か月でどれほど必要なのか?

電気や水道などのインフラが整った家に安穏と暮らしている私は何も知らない。請求された分だけ素直にお金を支払っている。

そのまま、知らないままでいいのだろうか。


ただ、ピースボートで地球一周をしながら船の中で過ごした3か月半の生活はホームレスの生活にちょっとだけ近かったのかもしれない。

部屋にはコンセントやシャワー、ベッドなどはあったけど、冷蔵庫なし、キッチンなし、電子レンジなし、カセットコンロもダメ、売店は高いしすぐ閉まる、携帯も使えない(海上なので電波がない)、洗濯は洗面所で洗ってベッドのカーテンレールに干す、といった状態で、それでもなんとかやりくりしていた。

不便はあったけど、悪い生活ではなかったな、と今になっては思う。


今までは大阪の民族学博物館や愛知のリトルワールドなんかで、東南アジアの家の実物大の展示を見て「こんな狭い空間に家族6人か」などと思っていた。

でもそれは、自分のものさしでしかものを見れていないってことだった。恥ずかしい。人はダンボー2個分の空間でも生きていけるのに、狭いって何だ。ものを持つこと、広い場所に住むことが裕福なのか。


忘れていた。私は日本一周した時に軽自動車で寝泊まりしていたのだ。大人4人しか乗れないあの空間でぐっすり寝ていたのだ。

人はどこででも生活できる。


また、本書でも紹介されているが、鴨長明の「方丈記」には、家を捨てて山に小屋を建てて過ごした時のことが書かれている。その小屋が簡単に組み立てられる移動式ハウスだったそうで、「動かすことのできない家に住むことは、合理的な態度ではない」と書かれているらしい。

やはり、ミニマムで動きやすいということは利点なのだ。


快適な車中泊生活再開への憧れが募ってきた。そして野草を見分けられるようになって、生活全体がアウトドアみたいな生き方をしたい。

本当の自分に出会う旅

鎌田實

「本当の自分に出会う旅」


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ただの旅行記ではない。

年をとっていても、足腰が悪くても、障害があっても、ガンを患っていても、旅をしていいんだと勇気づけてくれるエッセイ。

医師の鎌田實だから書けた、柔らかくてしっかりとした文章がいい。

病気と闘うというよりも、しんどいことに囚われることなく前を向きながらながら旅をすることで、病状が回復したり介護度が改善したりするそうだ。奇跡みたいなことが本当に起こっている。好きなことをするって、体にも心にもいいんだな、と気づかされた。


鎌田さんは「自然の中に入るとホッとして、副交感神経が刺激されてリンパ球がふえて、免疫力が上がる。生きる力が増すのだ。だから、旅をして、自然の中に入っていき、ホッとしたり、夕陽に感動したりすることが大事なのだ。」と語っている。

会社勤めの向いてない私は社会に出てことごとくへこたれてるけど、会社を辞める度に旅に出ている。そうすると元気になる。それはきっと副交感神経が刺激されるからだったのだろうな。


また、本書でも軽く触れているが、鎌田さんが代表を務めるJIM-NET(日本イラク医療支援ネットワーク)というものがあり、私はそこが開催してるチョコ募金に2年前から協力している。まさかJIM-NETの話が出るとは思ってもなくて、自分もこの本に少し関われたような気がしてなんだか嬉しくなった。


わたしがいなかった街で

柴崎友香

「わたしがいなかった街で」


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友達がやってた演劇の中で使われていた本。

勧められたわけじゃないけど、ちょっと興味があって読んでみた。


著者はよくものを考える人なのかな、という印象。考えすぎて哲学的になって自分でも混乱しちゃうみたいな。そんな感じを受けた。

昔の私もこういうところあった。


"日常"ってどういうことだろう、というぼんやりした気持ちを、ゆっくり煮詰めながら考えていくような話。


印象的だった場面は(ちょっと長いが)、

「日常という言葉に当てはまるものがどこかにあったとして、それは穏やかとか退屈とか昨日と同じような生活とかいうところにあるものではなくて、破壊された街の瓦礫の中で道端で倒れたまま放置されている死体を横目に歩いて行ったあの親子、ナパーム弾が降ってくる下で見上げる飛行機、ジャングルで負傷兵を運ぶ担架を持った兵士が足を滑らせて崩れ落ちる瞬間、そういうものを目撃したときに、その向こうに一瞬だけ見えそうになる世界なんじゃないかと思う。

しかし、それは、当たり前のことがなくなったときにその大切さに気がつくというような箴言とはまた別のことだ。(中略) 自分がここに存在していること自体が、夢みたいなものなんじゃないかと、感じること。」

というもの。戦争のドキュメンタリーを見ていた主人公が感じた内容だった。


"一瞬だけ見えそうになる世界"


この言葉が引っかかった。

どういうことだろう。

テストで国語の問題を解く時のように久しぶりに何度も読み返して考えた。

これが日常だ、というもの・ことは、ふとした瞬間に現れて、記憶として捕まえられそうなのに捕まえられなくて、気づいたら過ぎ去っていた、みたいなものなのかなぁと思ったり。

ガイドブックにぜったい載らない海外パック旅行の選び方・歩き方

佐藤治彦

「ガイドブックにぜったい載らない海外パック旅行の選び方・歩き方」


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先日読んだ「ひとりっぷ」とは逆に、こちらはパックツアーで海外旅行する人向け。

でもやっぱり、こちらの本にも現地の自由行動はバスがいいと書いてある。私、バス苦手なんだよなぁ、と渋い顔をしながら読んでいた。


というのも、私の住んでいるところは田舎で、最寄りのバス停は1日に5本程度しか停まらないのだ。だから、そもそもバスに乗る文化がない。バスに乗るくらいなら、自家用車でスイーっと買い物にもレジャーにも出てしまう。

"バスの乗り方が分からない"と言っても過言ではないかもしれない。乗ったことがないことはないけれど、いつも緊張する。

行き先合ってる?乗り込むのは前から?後ろから?整理券取るよね?降りるとこどこ?次?小銭ないんだけどどうしようというように、かなり不安いっぱいで乗ることになる。海外なら言葉もスムーズに通じないからなおさらだ。


ただ、2冊読んで2冊ともバスを勧めてくるくらいなので、やっぱり慣れなきゃなぁ、と改めて思った次第です。

次の目標は「海外でローカル路線バスに乗ること」にしよう。来月ソウルと香港・マカオに行く予定なので、たぶんそこで練習できるはず。