はらぺこ本の虫

読んだ本をゆるーくご紹介。ジューシーな文章が大好物です。

たまには世界のどこかでふたりっぷ

「たまには世界のどこかでふたりっぷ」 ひとりっP 地曳いく子 ひとりっぷシリーズの一冊。2020年のコロナ真っ最中に発行された本書。県外移動が制限されていた時期もあったなぁと思いながら、アフターコロナの世界が来てくれてよかったと2024年の今、読んで…

ほんとはかわいくないフィンランド

「ほんとはかわいくないフィンランド」 芹澤桂 山陰の冬。北欧の国・フィンランドに学べるところがあるかもしれない、と思って読んでみたが、やっぱりフィンランドでも日照時間が少ないことからしんどさを感じる人も多いらしい。 しかし、本書から学んだのは…

旅行者の朝食

「旅行者の朝食」 米原万里 この本を見つけたのは古本屋さんの文春文庫コーナー。"旅行者"という言葉に惹かれて手にとり、表紙と目次を見て食べ物についてのエッセイだと確信してレジに直行した。その勘は当たっていて、ものすごく面白い文章が詰め込まれた…

アイランド・ホッパー 2泊3日旅ごはん島じかん

「アイランド・ホッパー 2泊3日旅ごはん島じかん」 中澤日菜子 まず離島とは?と調べてみたけれど、決まりは法律によっても様々らしく、そもそも日本自体が島国なので離島の定義が難しい気がした。 橋やトンネルで繋がっている本州、北海道、九州、四国以外…

ちょっとそこまで旅してみよう

「ちょっとそこまで旅してみよう」 益田ミリ 私とは旅の仕方やお金の使い方が違うけれど、唯一同じ匂いを感じたのは、食べ物に目がない、というところ。おだんご、アイスクリーム、シナモンロール。いいね。私もミリさんのエッセイを読みながら、鹿児島にあ…

ハングルへの旅

「ハングルへの旅」 茨木のり子 茨木のり子さんの詩「自分の感受性くらい」が大好きで詩集も持ってるほどだったけれど、エッセイは初めて。韓国への旅を予定していたこともあり、古本屋の本棚でこの本が私を呼んでいるような気がして手に取った。 読み進めて…

こういう旅はもう二度としないだろう

「こういう旅はもう二度としないだろう」 銀色夏生 前半は消化不良だった旅を成仏させるために、後半はだんだん団体旅行のコツを掴んできた記録用に書かれたエッセイのように感じた。 筆者はある意味素直というか、つまらないことをつまらないと書く人なのだ…

旅ドロップ

「旅ドロップ」 江國香織 私は子どもの頃からのクセで、読書中にわからない言葉や知らない物が出てきたら辞書で調べる、ということをしている。そのおかげで、なんとなく読み進める、というのができない体になってしまった。はっきりしないままでいるとむず…

音楽は自由にする

「音楽は自由にする」 坂本龍一 2023年3月に亡くなった音楽家の坂本龍一さんの自伝。 知り合いに本をいただいたので読んでみる。この本を送ってくださった方は坂本さんと同年代。だからこそ、彼の学生時代の話には共感したり懐かしく思ったりするそう。 坂本…

にっぽん・海風魚旅2 くじら雲追跡編

「にっぽん・海風魚旅2 くじら雲追跡編」 椎名誠 久しぶりに読書。車での通勤時間が長くなってからは、もっぱらラジオというかポッドキャストを聞くばかりの日々だった。 この本を読むきっかけになったのは、カヤック仲間の西村さんが「ワシが出てるから読ん…

場所はいつも旅先だった

「場所はいつも旅先だった」 松浦弥太郎 アメリカで暮らした日々や、各国を旅したエピソードを綴ったエッセイ。 「旅を旅とするには、なにが必要なのか。そんなことを真剣に考えるか否かで、その人の人生は大きく変るような気がする」という著者の言葉には大…

世界で一番好きな店

「世界で一番好きな店」 企画・編集 ふもと出版 プロの作家ではない人たちが自分の思い入れのあるお店について執筆したアンソロジー。 一番おいしいと思う店ではなく、"好きな店"としたところに編集者のセンスを感じる。 そしてなによりも鳥取県の倉吉市にあ…

ヤモリ、カエル、シジミチョウ

「ヤモリ、カエル、シジミチョウ」江國香織さまざまな登場人物たちの視点が切り替わりながら進んでいく小説。その中でも、幼稚園児の拓人目線で進んでいく話が私は一番気に入っている。子どもには子どもの世界やルール、子どもなりの大人への気遣いみたいな…

年収90万円でハッピーライフ

「年収90万円でハッピーライフ」大原扁理救われる。その一言に尽きる。WEBデザインの会社に転職した時、社長から「今、君何歳?いい年なんだから、年齢×万円くらいもらわなきゃって感覚で働かなきゃだめだよ」と言われ、入社当初からくじけそうになったのを…

汽水空港台湾滞在記 vol.1

「汽水空港台湾滞在記 vol.1」モリテツヤ私も今すぐ台湾に行きたい。優しい世界がある気がする。ごはんはおいしいし、人は親切だし、日本人は漢字が読めるので旅をするのにも楽。モリさんもきっとそう感じたに違いない。文中に出てきた"「母国語以外の言語を…

わたしのマトカ

「わたしのマトカ」片桐はいりはいりさんの書く文章はカラッとサクッと、たまにフフッと。読んでいて楽しい。たくさんのお芝居をしていて、たくさんの豊かな文章に出会っているからだろうか。それだけでは理由にならないかもしれないが、良いアウトプットは…

インパラの朝

「インパラの朝」中村安希比べる必要はないって分かっているけれど、同じ「世界一周」でも中東やアフリカに行ったかそうではないかでは、旅の密度が違ってくる気がする。私は、後者だ。どちらかと言えば私も貧乏旅行ではあったのだけど、訪れた国々にはほど…

こころの対話 25のルール

「こころの対話 25のルール」伊藤守実兄のような10歳上の友達が貸してくれた。上司(50代男性)とのコミュニケーションがうまく取れない。ワンマン気質な上司。口が悪くて、なんでこんなに人をバカにするような言い方しかできないんだろう、と私はいつも思って…

全ての装備を知恵に置き換えること

「全ての装備を知恵に置き換えること」石川直樹スマホは便利だ。知らない道でもGoogleマップが案内してくれるし、言葉が通じなくても翻訳アプリを使えばいい。旅をする人は特に重宝している。でも。充電が切れたらそこでおしまい。予備バッテリーがあったと…

左岸

江國香織「左岸」いつから読み始めただろうか。年度の初めの頃には、お昼休みに上巻を持って木陰へお弁当を食べに行き、そのままそこで読むのが日課になっていた。それから毎日のように雨が降る、または降らなくとも地面が濡れている梅雨の時期へ突入し、地…

城崎へかえる

湊かなえ「城崎へかえる」城崎温泉だけでしか買えない小説。母子の思い出にまつわるショートストーリー。カニの足をイメージした外箱もかなりセンスがいい。読んでいて、微妙な関西弁のニュアンスの違いを感じた。兵庫の中でも地域によって方言がだいぶ違う…

ちょうちんそで

江國香織「ちょうちんそで」今になって思うに、文庫本の最後についている「解説」は読書感想文なのだと思う。当たり前と言えば当たり前なのだけど。小学校の頃に出た夏休みの宿題の読書感想文みたいなもの。違うこととすれば、解説を書いてるのは作家だった…

半農半Xという生き方

塩見直紀「半農半Xという生き方 決定版」いつかは山へかえると思っていた。以前から"半農半X"という概念は知っていて、自分が食べる分くらいの野菜をつくる傍ら、本業だったり好きなことをするというもの。泊まりに行ったゲストハウスでこの本を読み始めて、…

大泉エッセイ 僕が綴った16年

大泉洋「大泉エッセイ 僕が綴った16年」最近読書熱が冷めてきてるのか。それとも、電車に乗る時間がほぼなくなったからなのか。おそらく後者だろう。私にとって、電車で移動する時間 = 本を読む時間 という図式が成り立っている。そのため、あえて読書の時…

冷静と情熱のあいだ Blu

辻仁成「冷静と情熱のあいだ Blu」またもや途中で違う小説に浮気したり、それでも気になって戻ってきたりしながら、読み始めてから終わるまで2ヶ月かかった。辻さんの小説自体は初めて。江國さんとの共作じゃなかったら出会ってなかった作家さんだろうな。タ…

冷静と情熱のあいだ Rosso

江國香織「冷静と情熱のあいだ Rosso」日本にいるのに、全然小説を読めていなかった。他にも読みかけの本はあるけれど、最後まで読み終えたのは2ヶ月ぶり。ずいぶんと間が空いてしまった。江國さんの小説は、恋愛の華やかさや幸せを感じさせる描写があるにも…

いつか記憶からこぼれおちるとしても

江國香織「いつか記憶からこぼれおちるとしても」江國さんの小説には固有名詞がよく出てくる。だから、いつも半分リアル。本当に彼女たちがこの世界で生きているみたいな気がしてくる。人は必ず誰しもバックグラウンドがあるわけで、でもそれは他人からは見…

青春を山に賭けて

植村直己「青春を山に賭けて」大学では第二外国語として、ドイツ語をとっていた。ドイツ語自体はもうほとんど覚えてないけれど、四角い顔のヒョロッとしたおじちゃん先生のことはよく覚えている。本や詩が好きな人だった。そんな先生がおすすめしていたのが…

グアテマラの弟

片桐はいり「グアテマラの弟」キノコのような髪型でカクカクっとした輪郭に大きな目が特徴的な俳優さん、というイメージの片桐はいり。こんなに楽しい文章が書けるんだ、という発見とともに、読んでいて何度も笑わせてもらった。個性的な役を演じていること…

蚊がいる

穂村弘「蚊がいる」ずっと結婚できなかったのは知っていたが、結婚してからは奥さんネタのエッセイが増えている。しかしこの穂村さんが見初めただけあって、なかなか奥さんもおもしろい。「東大でいちばん馬鹿な人になら勝てると思う?」や「滝川クリステル…