はらぺこ本の虫

読んだ本をゆるーくご紹介。ジューシーな文章が大好物です。

すきまのおともだちたち

江國香織

「すきまのおともだちたち」


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大人のためにある絵本、のような気がした。

不思議の国のアリスにも似た理屈の通らなさとか、奇妙な登場人物。この世界ではお皿が車を運転できる。江國流ファンタジーがぱんぱんにつまっている。

そして、チラ、チラ、と現れる名言。

「私たちを本当にしばるのは、苦痛や災難や戸棚ではないのよ。幸福な思い出なの。」

意味深。でも、なんとなくわかる。

「あの頃は良かった」なんて言う人は、美しかった過去に囚われたまま、今を進めずにいるのだ、きっと。


それにしても、題名も世界観と同じで独特。

初めは「すきまのおともだち」だと思っていたけれど、よくよく見ると「おともだちたち」なのだ。漢字で書くと「お友達達」。なんだかおかしい。

でもここが、江國さんの感性が光るところなのかもしれない。

"おともだち"という、"知り合いではないけれど同じ空間にいる似た属性を持つ者"(例えばヒーローショー見に来ている子どもの総称として「おともだち」と使われる)というような存在が複数いるという感じ。読めばなんとなく理解できると思う。

まあ、あくまで想像でしかないけれど。


東直子さんの解説もいい。


"女の子"であることへの憧れ★★★★☆