はらぺこ本の虫

読んだ本をゆるーくご紹介。ジューシーな文章が大好物です。

とるにたらないものもの

江國香織

「とるにたらないものもの」


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子どもの姿をした江國さんが、こっそりと宝箱を開けて見せてくれるようなエッセイ。

日常のなんでもないことをよく観察・分析しているな、といつも思う。本人はそんな自覚はないのかもしれないけれど。


私も幼い頃に何を考えてたか思い出してみる。


トイレから出る時、いつも怖かった。

個室という空間で、自分ひとりしかいないし、外の世界と繋がっているのは目の前のドアしかない。そんな状況で、「この扉を開けたら知らない世界に通じているかもしれない」「もう家族の元に帰れなかったらどうしよう」という不安にたびたび襲われていた。

そして扉を開けて、いつも通りの家の廊下が見えるとホッとする。「ああよかった、今日も大丈夫だった」と思うのだ。

ドラえもんの見過ぎだったのかもしれないけれど、この頃は、幽霊や異世界がもっと近しいものだったのだろうな。


大人になるということは、冷静になってしまったり、図太くなるということ。それはそれで、少しさみしい。

江國さんのように、いつまでも子どもみたいなホクホクした感性を持ち続けたい。