「わたしがいなかった街で」
友達がやってた演劇の中で使われていた本。
勧められたわけじゃないけど、ちょっと興味があって読んでみた。
著者はよくものを考える人なのかな、という印象。考えすぎて哲学的になって自分でも混乱しちゃうみたいな。そんな感じを受けた。
昔の私もこういうところあった。
"日常"ってどういうことだろう、というぼんやりした気持ちを、ゆっくり煮詰めながら考えていくような話。
印象的だった場面は(ちょっと長いが)、
「日常という言葉に当てはまるものがどこかにあったとして、それは穏やかとか退屈とか昨日と同じような生活とかいうところにあるものではなくて、破壊された街の瓦礫の中で道端で倒れたまま放置されている死体を横目に歩いて行ったあの親子、ナパーム弾が降ってくる下で見上げる飛行機、ジャングルで負傷兵を運ぶ担架を持った兵士が足を滑らせて崩れ落ちる瞬間、そういうものを目撃したときに、その向こうに一瞬だけ見えそうになる世界なんじゃないかと思う。
しかし、それは、当たり前のことがなくなったときにその大切さに気がつくというような箴言とはまた別のことだ。(中略) 自分がここに存在していること自体が、夢みたいなものなんじゃないかと、感じること。」
というもの。戦争のドキュメンタリーを見ていた主人公が感じた内容だった。
"一瞬だけ見えそうになる世界"
この言葉が引っかかった。
どういうことだろう。
テストで国語の問題を解く時のように久しぶりに何度も読み返して考えた。
これが日常だ、というもの・ことは、ふとした瞬間に現れて、記憶として捕まえられそうなのに捕まえられなくて、気づいたら過ぎ去っていた、みたいなものなのかなぁと思ったり。