「グアテマラの弟」
キノコのような髪型でカクカクっとした輪郭に大きな目が特徴的な俳優さん、というイメージの片桐はいり。こんなに楽しい文章が書けるんだ、という発見とともに、読んでいて何度も笑わせてもらった。個性的な役を演じていることが多いけれど、本人も役柄に負けないほど楽しい人なんだろうな。
グアテマラにいる弟を中心とした、旅と家族と思い出の話。
私も世界一周の時に立ち寄ったグアテマラをとても気に入ったので、弟さんの気持ちが分かる気がする。なんだか、居心地がいいのだ。みんな優しく陽気で、せかせかした日本とは違い、グアテマラには穏やかに暮らせそうな雰囲気がある。
グアテマラの人たちは麦茶のようなコーヒーに砂糖を何杯も入れるらしい。弟の奥さんのペトラさんは「人生はあまりにも苦いから、せめてコーヒーだけは甘くするのよ」と言っていた。
ペトラさん語録は他にもある。
グアテマラ料理を習った時には「美味しいごはんさえ作れれば、人生たいていの問題は解決できる」と母から料理の手ほどきを受けたのだと教えてくれた。素敵だ。
物価が安い所に住む人は貧しいのか?
急激な経済成長を遂げた国は、本当に豊かになったのか?
しあわせって何なのか?
自分の居場所はここなのか?
YESやNOの2択なんかでは答えられない私の中の永遠の問いに、また新たな気づきを与えてくれるような一冊だった。
あとがきを弟さんが書いているのも、また良い。