はらぺこ本の虫

読んだ本をゆるーくご紹介。ジューシーな文章が大好物です。

ハングルへの旅

「ハングルへの旅」

茨木のり子

 

 

茨木のり子さんの詩「自分の感受性くらい」が大好きで詩集も持ってるほどだったけれど、エッセイは初めて。韓国への旅を予定していたこともあり、古本屋の本棚でこの本が私を呼んでいるような気がして手に取った。

読み進めていくと、のり子さんは私の祖母と同い年であることが判明した。寅年。より身近に感じる。大正時代の終わりに生まれ、戦争を生きた人。

それなのに、昨日書かれたのかと思うほどユーモラスで若々しい文章に惚れ惚れした。書かれたのはきっと昭和の最後あたりだけれど、ちっとも古さを感じない。品と教養に満ちている。

 

柳宗悦浜田庄司など民藝運動をしていた方の名前がポンポンと出てくるところにも、知識の深さを感じた。あとがきに書かれていた

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隣国語の魅力、おもしろさに、いろんな角度から光をあてて、日本人、特に若い人たちに「私もやってみようかな」と、ふと心の動くような、いわば魅惑の書を書きたかったのである。

"

という一文のとおり、まさに私をより滋味深いハングルの道に導いてくれたような気がする。もっと勉強して、知りたくなった。

 

愛情、慈しみと言ってもいいのかもしれない、そんな気持ちをたっぷり含んだ柔らかな言葉たちに何度もうるうるとさせられた本書。のり子さんはもう亡くなられているのに、本を通して考え方や優しさに触れられるのが不思議でたまらなかった。

また他のエッセイも読んでみたい。