はらぺこ本の虫

読んだ本をゆるーくご紹介。ジューシーな文章が大好物です。

旅ドロップ

「旅ドロップ」

江國香織

 

 

私は子どもの頃からのクセで、読書中にわからない言葉や知らない物が出てきたら辞書で調べる、ということをしている。そのおかげで、なんとなく読み進める、というのができない体になってしまった。はっきりしないままでいるとむずむずするのだ。

 

児童書以外はひたすら調べながら本を読み進めていた小学生時代。幸いにも調べるという行為が嫌いではなかったのがよかったのだろう。その甲斐もあって、高校生の頃には古い文学の言い回しや難しめの文章でもするする読めるようになっていて、自分の語彙力が豊富で嬉しい、本を中断することなく読めて嬉しい、という感情が芽生えていた。

しかし、この感情をいい意味で壊してくれたのが江國香織さんなのである。

 

江國さんがさらさらっと書いているようなエッセイでも、初めて見る単語がたくさん出てくる。さらに彼女はそれらをあたかも読む人全員が知ってるように表現するので、メジャーではない食べ物が出てきてもそもそも説明などはしない。私は江國さんのそんなところが好きなのだ。

 

私は江國さんの本を読む時は必ずと言っていいほど、子どもの頃のように調べながら読み進める。しかし今の私には手元にスマホがある。文明の利器。あの重たい国語辞典を、時には広辞苑を手元に持ってこなくても検索できるのだ。

「おきゅうと」の意味を知ってにんまりする。なるほど、こんな食べ物があるのか。

新しい言葉を知ること、というのは大人になると減ってしまうからこそ、調べることが必要な江國さんの文章は、私にとって懐かしく嬉しいものなのだと感じる。